2018 年 66 巻 12 号 p. 588-591
ヘムと呼ばれる鉄ポルフィリン錯体を補因子として有する一連の金属酵素は,生体内で多種多様な化学反応を触媒する。近年,様々な金属酵素の構造と反応機構の解明が進み,金属酵素の有用性を非天然の化学反応にまで拡張しようとする試みも数多く実施されている。そのアプローチの1つとして,人工的に合成した非天然の金属錯体を補因子としてタンパク質と組み合わせた「人工金属酵素」が近年,注目を集めている。生体系がこれまでに獲得することが不可能であった金属種から構成される錯体を,有機合成化学的な分子設計をもとに合成し,タンパク質と融合させることで,人工金属酵素は,天然に見られない新規の,あるいは天然を凌駕する化学的機能・反応性を発揮する。