日本東洋医学雑誌
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原著
漢方を利用した女子駅伝選手の新しい管理方法
―スポーツ漢方医学の可能性について―
中田 英之八重樫 稔秋葉 哲生西村 甲石毛 敦渡邉 賢治
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2007 年 58 巻 1 号 p. 49-55

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抄録

競技スポーツは健康を目的とした運動に比べ, 身体に強い負荷を与える。特に女子選手においては, 身体の消耗が激しいため月経不順, 慢性疲労を始めとした体調不良に陥りやすい。そのため, 選手は練習プログラムの未消化, 成績の悪化, 競技の継続困難をきたすこともある。我々は, スポーツトレーニング負荷で生じる身体症状と血液検査所見および漢方医学的所見の関係, さらに身体症状に対する漢方薬投与の有効性について検討した。対象は陸上自衛隊東北方面隊女子駅伝チーム9名 (19歳から27歳, 中央値19歳) である。トレーニング負荷前後でHb, BUN, AST, ALT, CPKの測定, 漢方医学的診察, 身体症状の聴取を行った。身体症状出現予防に桂枝茯苓丸, 六君子湯, 四物湯をトレーニング期間中に投与し, 症状の変化について調査した。トレーニング負荷によりCPKが500IU/l以上になる症例では, 全身倦怠感, 膝痛, 腰痛などの身体症状が出現し, 漢方医学的所見として小腹にお血の圧痛が認められた。漢方薬投与により, トレーニングに伴う各種自覚症状は完全に消失し, 計画的にトレーニングを行うことができた。選手の記録は全例で向上した。以上の成績は, スポーツ選手の管理に漢方薬を利用することが有用であることを強く示唆する。

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© 2007 一般社団法人 日本東洋医学会
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