日本東洋医学雑誌
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教育講演・基礎漢方講座
フェアウェル講座 : 漢方医学への提言とまとめ
―コンテクストからみた漢方理論―
喜多 敏明
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2007 年 58 巻 4 号 p. 709-721

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抄録

漢方医学の「基本的概念」および「理論的枠組み」について, 生命科学における最新の知見を活用しながら, “コンテクスト” をキーワードに解説することで, 漢方医学の「普遍的理解」にむけての取り組みの一助とする。
気血水とは, 細胞の環境 (=コンテクスト) を構成する3要素であり, 生命活動 (代謝や情報の流れ) を維持・活性化する働きを担っている。気血水のこの働きにより, 生体の機能と構造が正常に営まれる。
五臓には, 細胞の環境を維持する器官としての側面だけでなく, 器官の活動を制御する高次制御システムとしての側面もある。高次制御システムとしての五臓は, 全体の場の状況 (=コンテクスト) を形成することによって各器官の生命活動を統合的に制御する。
病者の生命活動 (=闘病様式) は, 自然の経過や治療的介入によって時々刻々と変化する。『傷寒論』は, 闘病様式の変化を六病位という文脈 (=コンテクスト) で記述し, そのバリエーションに即した治療方剤の選択を指示している。
西洋医学との連携および中医学との対話といった国際的な視野に立ったとき, 漢方医学の基本的概念および理論的枠組みについての普遍的理解にむけての取り組みによって, 漢方医学を誰にでも理解できるように説明していくことこそが, 21世紀に漢方医療を行っている我々に課された使命である。

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© 2007 一般社団法人 日本東洋医学会
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