2007 年 58 巻 5 号 p. 847-852
2004/05シーズンのA型インフルエンザ感染症の障害児・者施設における流行状況を把握し, 漢方薬による予防効果について後方視的に検討した。全国のサーベイランスの結果から, このシーズンはB型の流行と例年より遅くまで流行したA型がワクチン株と抗原性が異なっていたため, ワクチンなど通常の予防対策では有効でなかったと推測された。全員, インフルエンザワクチン接種にも関わらず, 2005年3月末から5月末の約2カ月間に, 施設利用者の47.8% (43/90), 職員22.7% (25/110) が罹患した。漢方薬内服の有無では罹患率の差はなかった。しかし漢方薬内服者のうち, 補剤と非補剤を比較すると罹患率に有意差 (p<0.05) が見られた。補剤の十全大補湯を内服していた8例では2例のみの罹患であった。日常の健康管理上, 補剤の投与が障害児・者の集団感染予防に役立つ可能性が示唆された。補剤と免疫賦活機能についても若干の考察を加えた。