日本東洋医学雑誌
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原著
非接触型赤外線温度計による体表温度の検討
―冷え症の病態についての検討―
石田 和之佐藤 弘
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2007 年 58 巻 6 号 p. 1107-1112

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抄録

目的 : 冷えは頻繁に認められる訴えである。しかし, 冷えを自覚しているにもかかわらず, 他覚的には皮膚の冷感がない症例も存在する。我々は体表温度を測定し, 自覚症状と他覚所見の解離, 及び表面温度に対する気血水の影響について検討した。
方法 : 当院初診の女性患者を対象に, 非接触型赤外線温度計を用いて身体各部の表面温度を測定した。標本を季節 (7~9月, 10月~12月, 1月~3月) と, 気虚, お血, 水滞の有無に層別化し比較検討した。
結果 : 冷えのない群と較べて冷えのある群が有意に低温であることはなく, むしろ特定の条件下では冷えのある群の表面温度は冷えのない群より高かった。また, 気虚, 水滞があると表面温度が低く, お血があると逆に高くなる傾向があった。
考察 : 特定の状況下 (足底・7~9月・気虚なし, 足底・10月~12月・お血あり) とはいえ自覚的冷えと表面温度の解離している例が実在したことから, 自覚的冷えは表面温度によってのみ規定されているのではなく, 気血水など他の要因の影響を受けて変化しうることが判明した。
結論 : 冷えの治療に際しては患者の冷えの状態をよく観察し, 気血水の異常を把握して治療する必要がある。その際, 赤外線温度計は素早く簡便に温度測定ができ, 臨床的に有用と考えられた。

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© 2007 一般社団法人 日本東洋医学会
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