日本東洋医学雑誌
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臨床報告
蘇子降気湯と茯苓飲の併用が奏効した咽喉頭違和感と乾性咳嗽の一例
星野 綾美巽 武司奥 裕子佐藤 浩子伊藤 克彦田村 遵一小暮 敏明
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2007 年 58 巻 6 号 p. 1121-1126

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抄録

乾燥症状を伴う咽喉頭部の違和感や乾性咳嗽に蘇子降気湯が奏効した一例を経験したので報告する。症例は62歳の男性, X年10月頃から喉の乾燥感と咳嗽, 息苦しさを自覚し, 近医耳鼻科を受診した。咽喉頭に異常はなく投薬を受けたが症状は不変で, さらに食欲低下も出現したため, 和漢診療を希望して当科を受診した。当院でも耳鼻科と併診としたが, ガムテストで軽度の唾液分泌量の低下を認める以外に明らかな異常を認めず, 眼の乾燥症状もみられなかった。口腔乾燥症による咽頭の違和感と息苦しさと考えられ, 受診時から1カ月間, 麦門冬湯合半夏厚朴湯を投与したが不変であった。茯苓飲合半夏厚朴湯に転方後, 食欲は改善傾向となったが, 強い咽喉頭乾燥感は続いていた。そこで, 気逆が主病態と考え蘇子降気湯に転方した。投与1カ月後から乾燥感が軽減し, その後漸次息苦しさや咳嗽も消失, 投与11カ月で廃薬となった。乾燥症状の存在する咳嗽や息苦しさに対して, 本方の有用性が示唆された。

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© 2007 一般社団法人 日本東洋医学会
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