日本東洋医学雑誌
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臨床報告
皮膚疾患に対する十全大補湯の応用とその作用機序に関する一考察
地野 充時関矢 信康大野 賢二平崎 能郎林 克美笠原 裕司喜多 敏明檜山 幸孝並木 隆雄済木 育夫寺澤 捷年
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2008 年 59 巻 1 号 p. 63-71

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抄録

十全大補湯が有効であった皮膚疾患3例を経験した。十全大補湯は伝統的に気血両虚の病態に使用され,現在では様々な皮膚疾患にもしばしば応用されている方剤である。自然免疫系の受容体であるToll‐like receptors (TLRs)が抗原提示細胞に発現していることが近年明らかになっているが,我々は以前,十全大補湯がマウス腹腔滲出細胞において,TLR4シグナル伝達経路に影響を及ぼし,interleukin‐12(IL‐12)およびinterferon‐γ(IFN‐γ)産生を増強することを報告した。表皮にも抗原提示細胞であるLangerhans細胞が存在するため,十全大補湯がLangerhans細胞のTLRシグナル伝達経路に作用しTh1/2バランスを改善している可能性がある。皮膚疾患に対する十全大補湯の作用機序の一つとして,自然免疫系を介する獲得免疫系への影響を示唆する症例と考えられた。

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© 2008 一般社団法人 日本東洋医学会
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