日本東洋医学雑誌
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原著
マウスアミラーゼ阻害活性を利用した傷寒論における麻黄湯煎出手順の検討
小林 匡子長岡 佐知松山 園美吉崎 文彦
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2008 年 59 巻 3 号 p. 477-482

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抄録

傷寒論に記載されている麻黄湯の煎出手順の指示の意味について,配合されている麻黄のアミラーゼ阻害活性を利用して検討した。この酵素はストレスと密接な関係があり,その指標として臨床上応用されている。
実験に利用したα-アミラーゼはマウス分離血漿中のもので,酵素活性の測定はCaraway法に準じて行われた。現在行われている一般的な煎出法と傷寒論に記載された煎出法(まず麻黄のみを先に煎じ,次に残りの3生薬を加え,さらに煎じる)により得られた煎液について,エキス収量,エキスとその中に含まれる多糖粗画分(活性成分のひとつ)やその他の画分の阻害活性を比較したところ,煎出エキスにおいて後者の煎出法では前者の煎出法より明らかに阻害活性を増強した。従って傷寒論に記載された煎出法には,麻黄湯の生体に対するストレスを減らし,麻黄の副作用を軽減する目的があるものと推測された。このような煎出の過程全体を反映した生物学的な質的変化に関する研究アプローチは,アルカロイドなど特定の成分のみを指標にした理化学的分析とは異なった視点であり,傷寒論や金匱要略に記載されている煎出や服用方法の意義を科学的に解明していく上で有用と思われる。

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© 2008 一般社団法人 日本東洋医学会
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