日本東洋医学雑誌
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原著
腹診教育用シミュレータの開発
矢久保 修嗣木下 優子安藝 竜彦太田 浩
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2008 年 59 巻 4 号 p. 595-600

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抄録

患者から身体所見を得ることは臨床では極めて重要である。漢方医学でも日本で発達してきた腹部の独特な触診を行う腹診が伝えられてきている。腹診は患者の腹部を医師が触診し,腹証という腹部にみられる所見を得る方法である。しかし,この腹診の教育では,学生に手から得られる感覚を教育することや,典型的な腹証を用意することなど困難がある。このため,典型的な腹証の教育ができるようなシミュレータの作成を行った。これは心下痞こう,胸脇苦満,小腹硬満,腹直筋攣急など,患者の腹部にみられる特定部位における医師が触知する抵抗感や,小腹不仁では抵抗減弱感を再現した。また,心下部振水音は,適切な手技により心窩部における拍水音が聴かれるように工夫した。下腹部にみられるお血の圧痛に関して,導電性ゴムを用いて特殊なスイッチを作成し,電子音発生装置を組み込むことにより,小腹硬満モデルに臍傍,回盲部,S状結腸部の圧痛所見を加えた。この腹診教育用シミュレータにより,患者の腹部から得られる所見を学生は体験として学ぶことが可能となり,漢方医学における腹診の教育に効果を発揮することが期待される。

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© 2008 一般社団法人 日本東洋医学会
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