日本東洋医学雑誌
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会頭講演
アルツハイマー病の制圧と東洋医学
荒井 啓行
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2008 年 59 巻 5 号 p. 683-697

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抄録

1984年から本格的に始まったアルツハイマー病(AD)研究から,ADには正常からAD発症に向って走っている長い無症候期間があることが明らかにされた。つまりADは未病性を有している疾患である。水面下の氷塊が水面上に顔を出さないようにどのような養生が必要なのだろうか?またこの氷塊はアミロイドイメージングという新技術によって可視化することも可能となった。氷塊を溶かすのに漢方薬に大きな期待がされている。抑肝散は認知症に伴なう問題行動や精神症状を有害事象の誘発なく穏やかに改善に導くばかりでなく,神経難病とされているハンチントン病の不随意運動を軽減する効果もある。
これからの漢方医には,(1)西洋医学の何たるかと西洋医学の欠点をしっかり理解し,西洋医学サイドと協調できる,またWHOなどの海外動向をしっかり収集できるなどの多様な能力が要求されると思われ,これを「多機能型漢方医」と呼びたい。

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© 2008 一般社団法人 日本東洋医学会
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