日本東洋医学雑誌
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原著
角質水分計による血虚の客観的評価の試み
石田 和之佐藤 弘
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2009 年 60 巻 1 号 p. 61-67

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抄録

[目的]血虚では不眠・めまいなど全身症状や肌荒れなど皮膚関連の症状を呈し,心身に様々な影響を与える。血虚の診断は患者や医師の主観による部分が多く,必ずしも客観的とは言えないため,角質水分計を用いて血虚の客観的評価を試みた。
[方法]当院を初診で,漢方未治療の女性患者80名(血虚なし38名・血虚あり42名)を対象に,角質水分計にて角質の水分量を測定し,血虚スコアと比較検討した。
[結果]血虚なし群,あり群で比較した場合,頸部,前腕の水分量には有意差を認めたが,腹部には有意差を認めなかった。血虚スコアと頸部角質水分量の相関係数は-0.41で,数量化1類では皮膚関連項目に加え過少月経・腹直筋攣急のカテゴリー数値も大きかった。治療前後の比較では血虚スコアの改善と角質水分量の推移が概ね一致していた。
[考察]角質水分量は,皮膚と直接関連しない項目とも関連していたが,血虚スコアの代用とはならなかった。しかし,治療効果の目安となるのではないかと推察された。
[結論]角質水分量は血虚の治療の目安となりうるが,臨床への応用には更なる検討を要する。

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© 2009 一般社団法人 日本東洋医学会
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