漢方生薬「大黄」は中国で古来,酒による修治(酒製)が行われてきた。大黄の酒製には酒浸,酒洗及び酒炒の3種があり,現在も「酒大黄」と称する酒炒品が用いられているが,酒製法の違いによる薬効の相違点や酒炒品が使用され始めた経緯は明確でない。本研究では,理論的治療を目的とした金元代以降の古文献の記載内容を調査した結果,「酒浸大黄」の薬効は活血など駆瘀血,「酒洗大黄」の薬効は瀉下または健胃であり,「酒炒大黄」は医方家の間で使用され,明代には「酒浸大黄」及び「酒洗大黄」と同様の薬効を期待して用いられていたと考察した。