日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
臨床報告
六味丸が著効した夜尿症の兄弟例
石田 和之佐藤 弘
著者情報
キーワード: 夜尿症, 家族歴, 六味丸, 腎虚
ジャーナル フリー

2009 年 60 巻 6 号 p. 635-639

詳細
抄録

症例は8歳と7歳の兄弟。主訴は夜尿症。二人とも幼少期より毎晩夜尿があり,現在まで紙オムツを付けて寝ている。そのうち治るだろうと様子を見ていたが,改善の兆しがないため当研究所を受診した。家族歴として兄弟の父親も小児期に夜尿があり,12歳まで続いていた。診察所見では兄は腹直筋が緊張し非常にくすぐったがり屋であったが,弟には特記すべき所見は無かった。兄は柴胡桂枝湯エキスで,弟は葛根湯エキスにて治療を開始した。しかし,明らかな効果がなかったため12週目から兄弟に六味丸エキスを追加した。併用開始後,兄は14週間で,弟は10週間で夜尿が改善し始め,それぞれ20週,28週で夜尿がほぼ完治した。
経過からは六味丸の治療効果が推測されるが,二人とも夜尿以外には大きな問題はなく,腎虚を疑わせる所見はなかった。しかしながら,父親・兄弟ともに同様の夜尿であったことから,先天の気(腎気)の問題が疑われた。

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本東洋医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top