日本東洋医学雑誌
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原著
C型慢性肝疾患(慢性肝炎・肝硬変症)難治例に対して十全大補湯は第3の肝庇護剤になりえるか
多羅尾 和郎坂本 康成上野 誠宮川 薫大川 伸一
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2010 年 61 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

C型慢性肝疾患(慢性肝炎,肝硬変症)では,Peg-interferon(IFN)+Ribavirin療法で治療が完結せず,強力ネオミノファーゲンC(SNMC),ウルソデオキシコール酸(UDCA)併用療法でもALT値が十分低下せず難治性となる症例も多い。今回,漢方製剤,十全大補湯の治療効果について検討した。即ち,IFN療法で治療が完結しないC型慢性肝疾患のうち,十全大補湯の適応となる疲労倦怠感または食欲低下を訴え,しかも従来の,SNMC,UDCAさらには両者の併用療法でもALT平均値が原則として80単位未満に下降しない67症例を対象とし,十全大補湯のALT下降効果についてretrospectiveに検討した。尚,67例の内訳は,IFN療法を希望しなかった27例,IFN不適応22例,IFN無効(non responder)9例,IFN治療をしたが途中で副作用のため中断した9例であった。さらに,このうち十全大補湯を6カ月以上投与できた40症例を解析対象とした。投与前6カ月と比較して1年以内に6カ月ごとのALT平均値が25%以上低下したものを有効例とすると,40例中,有効例は23例(57.5%)であった。男女別では,男性で41.2%,女性で69.6%と女性で有効率が高い傾向にあった。SNMC,UDCA併用療法でも原則として80単位以上でALT値下降を得ず,十全大補湯を加えて3剤併用とした32症例では18例(56.3%)で,有効例となった。十全大補湯を2年間投与し続けた23症例では9例(39.1%)で12,18,24カ月まで経時的にALT値が次第に下降し,効力が増強した。十全大補湯は,SNMC,UDCAに次ぐC型慢性肝疾患に対する第3の肝庇護剤となる可能性が示唆された。

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© 2010 一般社団法人 日本東洋医学会
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