日本東洋医学雑誌
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臨床報告
小柴胡湯が奏効した結節性紅斑をともなう肥厚性硬膜炎の1例
藤木 富士夫河野 眞司平田 道彦
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2010 年 61 巻 1 号 p. 51-55

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抄録

症例は59歳女性,入院2カ月前より左上眼瞼腫脹をともなう左眼球後部を中心とした頭痛,ならびに右下腿の有痛性の紅斑をともなう皮下結節を認めた。入院1カ月前に微熱,炎症所見と体重減少(-3kg/2カ月)を指摘され,非ステロイド系消炎鎮痛剤や抗菌剤が投与されたが改善しなかった。入院1週間前より桂枝湯と小柴胡湯を投与した。入院時の頭部造影MRIにて前頭蓋窩の硬膜肥厚像をみとめ肥厚性硬膜炎と診断した。髄液検査では単核球優位の細胞増多を認めた。右下腿皮下結節の病理診断は結節性紅斑と矛盾せず。入院後は小柴胡湯単剤を継続した。投薬2週間にて症状は消失,1カ月後に治癒した。結節性紅斑をともなう肥厚性硬膜炎として溶連菌感染,ベーチェット病などを疑うも特定できなかった。炎症性免疫疾患としてステロイド投与を検討したが,感染症の懸念のため投与を躊躇した。このような場合に小柴胡湯は選択薬になると考える。

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© 2010 一般社団法人 日本東洋医学会
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