緒言:大柴胡湯が有効な全身倦怠感や易疲労感の患者タイプを多変量解析により検討した。
対象と方法:全身倦怠感や易疲労感を訴え,随証治療にて大柴胡湯を投与した患者53名を対象とした。随伴症状,体質傾向,舌所見,腹部所見,年齢,性別,身長,体重,高血圧・高脂血症・糖尿病の有無,さらに,1カ月後の胸脇苦満の改善の有無を加えた計46項目を説明変数とし,全身倦怠感や易疲労感の改善の有無を目的変数として,多次元クロス表分析により最適な説明変数とその組み合わせを検討した。
結果:大柴胡湯によって全身倦怠感や易疲労感を改善できる患者タイプは,「発汗」,「のぼせ」,「喉のつまり感」,「胸の圧迫感」などの自覚症状を伴う人であった。特に,発汗の症状があって治療後に胸脇苦満が軽減する場合に,大柴胡湯による全身倦怠感や易疲労感の改善が最も関連する結果となった。
考察:「喉のつまり感」や「胸の圧迫感」などの気うつが背景にあると推測された。発汗は頭を含めた上半身に多い傾向があり,また,大柴胡湯による全身倦怠感や易疲労感の改善は,初診時の胸脇苦満の部位(右,左,両方)よりもむしろ治療後に胸脇苦満の軽減を認める人に認められやすいと考えられた。