本研究の目的は疫学調査を通して漢方医学の基礎概念を検証し,治療の客観的根拠を明示することである。方法として長野県長谷村に住む20歳以上の1,486人を対象に漢方医学に基づいた自覚症状に関する調査を行い,結果を解析した。有効回答者数は1,199人,回収率は80.7%だった。結果は性差に関しては女性で血の失調,男性で脾虚や気虚の症状が多く,年齢差を考慮すると,若年者は女性で血虚や水毒,男性で気虚,男女とも肝の失調が強く現れ,高齢者は男女とも腎虚が優勢だった。健康感に関しては,高齢者ほど健康だと感じても西洋医学的に病気を認める傾向が強かった。息切れなどの胸部症状は健康でないという自覚と強く相関し,健康感を損なう要因と考えられた。東洋医学の適応に関しては,実際に治療中の人と潜在的な適応者はいずれも約12人に1人の割合だった。今回の結果は漢方治療の臨床における客観的根拠として有用だと思われた。