日本東洋医学雑誌
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会頭講演
学問におけるパラダイム
—漢方医学の科学性—
石川 友章
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2010 年 61 巻 3 号 p. 267-281

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抄録

古来より悪疫との戦いが東西両医学の最大のテーマであり,細菌学は起炎菌発見と同定法,起炎性の証明,いわゆるコッホの4原則という,近代科学思想の礎である再現性を担保する思想が打ち立てられた。
しかしながら,感染症を取り巻く主要因子はhost-parasite relationshipとdrugの関係にあったが,薬剤開発に重点が置かれた。他の治療法の多様化にともないcompromised hostの出現で,この考え方では成りたたなくなった。
臨床医学においては再現性という問題は,背景となる人間という膨大なシステムが関与するために,明快な論理が存在しない。
漢方医学は人間を対象に治療学を行って来た医学で,システムとしての人間が表現する病態を,六経理論,陰陽虚実による證の把握により,システムとしての治療学が確立されており,その提示されている證よって,再現性の高い治療を行う事ができる。また日本漢方の口訣は先人の経験による治療効果の効率と再現性を高めるためのもので,治療上必要不可欠なバイアスである。漢方というシステム医学としての概念はこれからの西洋医学にも必須の概念になるであろう。

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© 2010 一般社団法人 日本東洋医学会
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