2010 年 61 巻 3 号 p. 282-288
中国では古来,生薬の目的としている薬効の向上のために煎じ時間の調節を行ってきた。医方書には各処方の煎じ時間を煎液の減少量によって定めている。本研究では,中国最古の医方書である『傷寒論』及び『金匱要略』に収載される「大黄」配合処方の煎じ時間を液量変化から調査した。その結果,大黄の煎じ時間は他生薬と同煎の場合,10,20,30,50分の4群に,後下の場合,1,5,10,20分の4群に分類できた。また,生大黄および修治大黄の煎液を調製し,主成分溶出量の変化を調査した結果,すべての条件で各成分は沸騰後30分で全量の80%以上が溶出された。すなわち,古来,大黄は主成分が全量未溶出である10~30分に調節して煎じる場合と,50分かけて全量が溶出されるまで煎じる場合があったことが明らかになった。一方,後下では煎じ終わる1~20分前に大黄を入れ,成分溶出量を調節していたことが明らかになった。