日本東洋医学雑誌
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臨床報告
外傷性頸部症候群に対する大柴胡湯治験
重田 哲哉小暮 敏明巽 武司地野 充時
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2011 年 62 巻 4 号 p. 559-564

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抄録

外傷性頸部症候群に対して大柴胡湯を投与した13例を経験した。その中で,著効例2例を症例提示した。症例1(40代男性)は,少陽病期で腹力は充実し,胸脇苦満も顕著であったことから,いわゆる大柴胡湯の目標と一致していた。一方,症例2(50代女性)は,少陽病期で腹力,胸脇苦満ともに中等度であったが,胸脇の張りの自覚と便秘を認めていた。13例での効果は,VASによる評価で,著効3例,有効6例,やや有効1例,無効3例であった。本症での大柴胡湯の使用目標を明らかにするために,13例での和漢診療学的所見を検討した。腹力が充実していた9例のうち有効以上は8例であるのに対して,中等度の症例では著効は1例で,やや有効1例,無効2例であった。さらに腹力中等度の無効例は2例とも腹部に他覚的な冷感が観察されたが,著効例ではみられなかった。
外傷性頸部症候群に大柴胡湯を用いる場合,あらためて随証治療が肝要であることが示唆された。しかしながら腹力が中等度の症例で腹部に冷感のみられない症例では本方が鑑別に挙げられてよいと考えられた。

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© 2011 一般社団法人 日本東洋医学会
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