日本東洋医学雑誌
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臨床報告
透析患者における上腹部の消化器症状に対して平胃散が著効した4例
高久 俊高久 千鶴乃栗林 秀樹大薗 英一平馬 直樹高橋 秀実
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2011 年 62 巻 4 号 p. 584-588

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抄録

慢性腎不全で血液透析療法中の患者の上腹部の消化器症状に対して平胃散が著効した4例を経験したので報告する。症例1は61歳男性。逆流性食道炎で主訴は食後の胃部停滞感。症例2は45歳男性。慢性胃炎で主訴は朝夕食後の胃部停滞感。症例3は61歳男性。慢性胃炎で主訴は胃部不快感。食思不振。症例4は69歳女性。慢性胃炎で主訴は食後の胃部停滞感と空腹時の上腹部痛。いずれの症例も胃粘膜保護剤,消化管運動改善薬,H2-blockerおよびプロトンポンプ阻害剤などで西洋医学的治療を施行するも症状改善に至らなかった。そこで,これら4症例の消化器症状は湿困脾胃が原因と考え,理気化湿,和胃作用を有する平胃散を併用したところ速やかに自覚症状の改善が認められた。一般に維持透析患者は無尿で体液貯留傾向にあり脾胃における湿邪が形成されやすい体内環境にあると思われ,このような患者群の胃腸障害に対して平胃散は有効と考えられた。

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© 2011 一般社団法人 日本東洋医学会
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