抄録
吉益東洞は臨床経験を積んでいく過程の中で,『傷寒論』や『金匱要略』に収載される湯液方と,丸散方を組み合わせる兼用法による治療体系を確立していった。東洞の丸散方の処方集には古来の楽律である十二律の名称を採って整理した十二律方という独自の丸散方がある。東洞は身体の様々な症状は,飲食の留滞に起因する毒によってもたらされるという万病一毒説を唱え,十二律方は毒である飲食の留滞を取り除く目的で用いられた。また,毒を診断する方法に腹診を,毒によって表れる症状を『傷寒論』の証と対応させ,腹診—毒—丸散,見証—病状—湯液方という東洞の医学体系の枠組みを明らかにした。