日本東洋医学雑誌
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臨床報告
茯苓甘草湯の消化器症状への応用
高木 恒太朗
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2012 年 63 巻 1 号 p. 25-30

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抄録

茯苓甘草湯は従来,主として発熱時の発作性脱汗に用いられてきたが消化器系の症状にも応用できる。
(症例1)39歳。20年以上前から非常に重篤な嘔気発作を繰り返していた。発作時に茯苓甘草湯を与えるとすぐに嘔気は消失,定期的に内服すると嘔気発作はほとんど起こらなくなった。(症例2)64歳。1年前に早期胃癌にて胃亜全摘術を受けた。2週間前から食事を摂ると嘔吐するようになりほとんど食べられなくなった。茯苓甘草湯を与えると嘔吐は起こらなくなった。(症例3)47歳。一日に数回,胃酸逆流,口苦,胸焼けがあった。茯苓甘草湯が奏効し現在では初めの20%程度まで軽減。(症例4)38歳。夜間に発作性の嘔気嘔吐があり動悸を伴った。発作予感時に茯苓甘草湯を内服すると嘔吐は抑制された。すべての症例は女性で症状は発作性であり,動悸や胸部不快感,生唾を伴っていた。これらの症状は茯苓甘草湯を与えるとすぐに改善し,続けて与えると発作頻度も著明に減少した。本方は発熱時の脱汗のみならず,発作性の嘔気,嘔吐,胃食道逆流などの消化器症状に対して広く用いられるべき薬方と考えられた。

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© 2012 一般社団法人 日本東洋医学会
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