日本東洋医学雑誌
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総説
漢方薬による薬剤性肺炎の診断
中島 正光
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2012 年 63 巻 2 号 p. 81-88

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抄録

治療目的で投与された薬剤により発症する薬剤性肺炎は大きな問題である。しかし,薬剤性肺炎の確定診断ができる検査方法はなく,経過,身体所見,検査などを総合して診断しなければならない。特に,薬剤性肺炎と鑑別困難な場合がある感染症の否定が重要である。また,本症診断のために薬剤リンパ球刺激テスト(Drug lymphocyte stimulation test : DLST)があるが,DLST は偽陽性偽陰性の頻度が低くなく,検査方法の基準が不明確などの問題点が多く,DLST を重視した薬剤性肺炎の確定診断は控える必要がある。そのような中で,肺線維症のマーカーであるKL‐6が薬剤性肺炎で高値になり,血清 KL‐6は補助診断法として有用な検査と考えられる。その他の薬剤性肺炎の診断に関わる検査方法についても解説する。
生薬による薬剤性肺炎の報告でも,DLST を重視した診断,感染症の否定が不十分などの問題があることも少なくない。一度,薬剤性肺炎と診断されると有用な薬剤であっても原則的にはその薬剤が使用できなくなる。薬剤性肺炎の診断には十分な注意が必要である。

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© 2012 一般社団法人 日本東洋医学会
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