2012 年 63 巻 4 号 p. 266-274
漢方生薬「生姜」および「乾姜」の修治(加工)法は中国と日本で異なっているが,その理由は明確ではない。本研究では,両生薬の修治法の歴史的変遷を調査した結果,中国では後漢末期からショウガの新鮮根茎を生姜としてきたことが明らかになった。一方,日本でも新鮮根茎を生姜としてきたが,明治時代に日本薬局方に収載する際に,乾燥根茎を充てたことが明らかになった。また,中国では,地域により乾姜の調製法が異なっており,古い時代には「流水に浸した後,一度乾燥させ,陶磁器内で醸したもの」を熱性が強い乾姜としていたが,清代中期には温性の乾燥根茎のみを使用するようになったと考察した。さらに,日本では「蒸した後,石灰を用いて乾燥させたもの」を独自に乾姜としていたが,李時珍が白色のものが良品と記したことから,石灰をまぶして白くしたものを薬舗で売り出し,その是非から明治時代以降,石灰を使用しない方法に代わったと判断した。