日本東洋医学雑誌
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臨床報告
産褥期の漿液性網膜剥離を伴う高血圧性網膜症に明朗飲加菊花が奏効した1例
西田 欣広唐木田 真也楢原 久司織部 和宏
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2012 年 63 巻 6 号 p. 395-400

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抄録

明朗飲は苓桂朮甘湯加車前子,細辛,黄連の構成からなり,和田東郭が原典とされている。もともと眼科疾患に応用されてきた処方である。今回,産褥期に視野異常を認めた漿液性網膜剥離に明朗飲加菊花が奏効した一例を経験したので報告する。
症例:症例は34歳,女性。妊娠中より当院で健診をうけていたが妊娠35週ころより耳鳴りが出現していた。妊娠36週に血圧が140/100mmHgと上昇し,重症妊娠高血圧症候群と診断され入院となった。入院後,血圧190/120mmHg となり緊急帝王切開術を施行された。産褥(術後)2日目より眼前が黄色くなり,視力低下が出現し,眼科学的診察により高血圧性網膜症および漿液性網膜剥離(両側)と診断された。点眼治療は気分不良のため中止した。1週間後より漢方治療を希望されたため明朗飲加菊花を処方したところ2週間で耳鳴りは消失した。4週間後の診察で網膜剥離も治癒,視野の異常も軽快した。点眼治療が困難な症例に漢方治療も選択肢になる可能性が示唆された。

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© 2012 一般社団法人 日本東洋医学会
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