2012 年 63 巻 6 号 p. 401-406
肺炎による慢性閉塞性肺疾患(COPD)増悪があり,抗菌薬投与を行ったものの薬疹を起こし,充分な加療をできず治療が難渋した症例に柴胡桂枝湯を投与し改善した1例を経験した。症例は86歳,女性。発熱のため当院を受診。胸部X 線写真,胸部CT スキャン画像にて肺炎を認めたため入院となった。抗菌薬加療を行うものの投与後に薬疹を発症するため充分な投与ができなかった。そこで,柴胡桂枝湯を投与したところ,肺炎像の軽快および,呼吸状態,発熱,せん妄,食欲不振といった全身症状の改善を認めた。柴胡桂枝湯は,抗炎症,免疫調節,抗精神作用など多面的な作用があるとされている。急性期の細菌性肺炎の加療は,抗菌薬投与が最も大切である。しかし,抗菌薬投与が困難となる時,漢方は,患者の病態改善,症状緩和につながると思われる。呼吸器分野での急性期治療で,漢方を投与し詳細な経過の得られた症例は少ないため報告した。