日本東洋医学雑誌
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臨床報告
異病同治と考えられた母娘の三症例
木村 容子佐藤 弘
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2013 年 64 巻 2 号 p. 93-98

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抄録

異なる症状・疾患に対して,同じ漢方薬を使用して経過が良好であった母娘患者の異病同治と考えられる3組の症例を経験したので報告する。症例1は,胃癌と大腸癌術後の体力低下を主訴とした母と片頭痛と更年期障害を訴える娘に加味逍遙散を中心とした処方を投与した症例である。症例2は,月経不順の母と手湿疹の娘に半夏厚朴湯を使用した症例である。症例3は,腰痛の母と背中の痛みを訴える娘に桂枝加竜骨牡蛎湯を処方した症例である。これら3処方(加味逍遙散,半夏厚朴湯,桂枝加竜骨牡蛎湯)は,いずれも「気」の巡りを整える処方である。
女性に対する漢方治療では,「気」の巡りを整えることが大切である場合が多い。また,親子間では,遺伝素因に基づく体質を考慮すると,異病同治が起こりうる可能性が高いことが推測された。主訴の背後にある漢方医学的な病態(証)が重要であり,今回は母娘といった同性の親子関係から遺伝的体質の関与が示唆された。

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© 2013 一般社団法人 日本東洋医学会
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