日本東洋医学雑誌
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臨床報告
経腟採卵後の下腹部痛・発熱・頻尿,尿失禁に漢方治療が奏効した一例
吉野 鉄大堀場 裕子水口 雄貴佐藤 卓末岡 浩渡辺 賢治
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2013 年 64 巻 3 号 p. 173-176

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抄録

経腟採卵後の著明な膀胱血腫に対して血腫除去を行った後の,日単位での変化に対する随証治療で改善をみた急性疾患の1例を報告する。症例は44歳女性。朝,体外受精のために静脈麻酔下に経腟超音波下採卵を施行し昼過ぎに帰宅した。同日夕方に,右下腹部痛,血尿,頻尿,尿失禁,発熱,悪寒が出現したため救急外来を受診し,超音波で膀胱内に径45mm 程度の血腫を認めたため入院となった。膀胱洗浄後に膀胱内持続還流,抗菌薬,止血薬を投与した。右下腹部痛は持続し,第5病日に発熱が再発した。浮脈,腹力中等度,右下腹部痛,頻尿,尿失禁,便秘傾向から大黄牡丹皮湯エキスを投与し,歯痕と入院時からの下腿浮腫を水毒とし五苓散料エキスを併用した。第6病日,右下腹部痛はほぼ消失,頻尿,尿失禁は軽減し,軟便になった。発熱時の発汗,脈浮虚,腹力虚より桂枝湯エキスに転方し,軽度の頻尿,尿失禁より猪苓湯エキスを併用すると汗が持続的に出て発熱を認めなくなり,頻尿,尿失禁も消失した。第7病日,全身状態良好となったため退院となった。

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© 2013 一般社団法人 日本東洋医学会
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