2013 年 64 巻 5 号 p. 261-264
乙字湯は痔疾患の処方として有名である。しかし,我々は口と肛門の解剖学的類似性に着目し,瘀血を伴う口唇炎に乙字湯が奏効した症例を経験した。症例は59歳女性。顔面・頚部の湿疹を主訴に当科を受診した。漢方治療により湿疹は改善傾向となったが,口唇の炎症と瘙痒は持続した。瘀血を目標に乙字湯を合方したところ,症状は改善した。乙字湯には,柴胡,升麻,黄芩,大黄等の清熱薬と血剤である当帰が含まれており,瘀血を主体とした口唇の炎症性疾患にも有効であると考えられる。