日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
臨床報告
クロミフェン無効な多嚢胞性卵巣症候群に対し,柴苓湯の併用療法が奏効した6症例の検討
中山 毅
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 66 巻 2 号 p. 83-88

詳細
抄録

多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は生殖年齢女性の5-8%に発症し,月経異常や不妊症などの主要な原因の一つである。PCOS の治療は受診年齢や背景,特に挙児希望の有無により異なる。挙児希望のある女性のPCOS に対する治療の第一選択はクロミフェン療法である。ただし抗エストロゲン作用に伴う,子宮内膜の菲薄化や頸管粘液の減少も伴うことや,クロミフェン療法が無効な患者もいる。そこでクロミフェン療法が無効なPCOS 患者に柴苓湯を併用し,排卵周期が回復した6症例を経験した。柴苓湯が有効であった症例の多くは,東洋医学的に瘀血や水滞スコア値が高く,また投与後の血中LH 値,LH/FSH 比が無効群よりも低下した。さらに柴苓湯有効群はテストストロン値もより低下していた。ゴナドトロピン療法や腹腔鏡手術などの第2選択が行われる前に,証に応じて試みる価値があると推察した。

著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本東洋医学会
次の記事
feedback
Top