2015 年 66 巻 3 号 p. 208-211
69歳男性。視力視野障害を契機に手術適応のある左緑内障と診断された。点眼薬による治療を受けるも左眼圧が降下しないため,漢方治療を希望して当科初診となった。初診時左眼圧は27mmHg であった。腹部に著明な鼓音を認めたことから半夏厚朴湯を処方した所,1ヵ月後の左眼圧は22mmHg と改善し,さらに腹部の鼓音が消失していた。投与開始から2年後にあっても左眼圧は概ね正常範囲内で推移しており,手術には至っていない。いくつかの眼圧上昇機序において,本症例は交感神経が優位な状態であった可能性があり,半夏厚朴湯はそれらに作用することで眼圧を低下させた可能性が示唆された。また半夏厚朴湯単方が眼圧降下に有効であった報告は見られず貴重と思われた。