漢方薬による薬物性肝障害の報告例が増えているが,その多くは黄疸などの症状で気付かれ,あるいは自覚症状はない場合でも,入院を要する高度肝機能異常を健診などで指摘される例が多い。われわれは,最近の当施設初診患者から,漢方薬による薬物性肝障害(処方は黄連解毒湯,柴胡桂枝乾姜湯,防風通聖散料)を疑われた症例を3 例見出した。これらの症例はいずれもALT100IU/l 以下で,副作用に直接関連すると思われる自覚症状を認めず,血液検査を行わなければ発見できなかった。いずれも休薬することにより,肝障害は改善・正常化した。黄芩含有処方については,無症状であっても常に肝障害を見逃さないよう注意を払い,服用中は定期的に採血を行っていくことが重要と考える。