日本東洋医学雑誌
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臨床報告
ばね指に対し温経湯が奏効した3症例
前田 ひろみ伊藤 ゆい吉永 亮土倉 潤一郎上田 晃三井上 博喜矢野 博美犬塚 央山口 昌俊藤野 昭宏田原 英一
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2015 年 66 巻 3 号 p. 218-222

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抄録

ばね指は,手のA1輪状靭帯の部位に狭窄を生じ円滑な指屈伸動作が阻害されることにより発症し,西洋医学的には消炎鎮痛剤,ステロイド剤注入,手術等で治療される。今回温経湯が奏効したばね指の3症例を報告する。症例1は71歳女性。腹部膨満感に対して漢方治療中に右第3指のばね指を発症し,口唇乾燥と手足のほてりを認めた。 症例2は56歳女性。手指の多関節痛に対して漢方治療中に左第4指のばね指を発症し,手のほてりを認めた。症例3は71歳女性。慢性腎不全で加療中に,左第1指のばね指を発症した。手のほてりや口唇乾燥を認めなかったが,皮膚の枯燥感を認めた。温経湯は,手掌煩熱や口唇乾燥を使用目標としており,補血・駆瘀血作用や抗炎症作用,滋潤作用を有する生薬で構成されている。温経湯のこれらの作用が,ばね指改善に寄与した可能性がある。

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© 2015 一般社団法人 日本東洋医学会
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