2015 年 66 巻 4 号 p. 282-287
漢方医学的腹診において臍を中心とした正中線の皮下に索状物を触れることがあり,これを正中芯と呼んでいる。 本稿ではこの索状物をMRI およびCT 撮影によって解剖学的に検討し,臍下部に見られる正中芯は尿膜管遺残であること,そして臍上の正中芯は肝円索であることを明らかにした。これまでの幾つかの著作では,小腹不仁と臍下部正中芯との関係は十分に明らかでは無かったが,このものが,既に報告されているように,小腹不仁を前提にして触知されるものであることから,小腹不仁の範疇に属した特異な兆候とすることが妥当であることを論じた。一方,臍上部の正中芯も,腹壁トーヌスが軟弱であることを前提にして触知可能なものであることを論じた。