日本東洋医学雑誌
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原著
心下痞鞕と背部兪穴との関連
—心下痞鞕の発現機序に関する病態生理学的考察—
寺澤 捷年
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2016 年 67 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

漢方医学において腹部の触診は非常に重要である。なぜならばある種の腹部徴候は特定の方剤群を指示するからである。最近,著者は心下痞鞕と背部兪穴の硬結が緊密に関連していることを見出した。また,28症例の検討によって,この旁脊柱筋の硬結を鍼によって緩めると心下痞鞕が即座に解消されることを明らかにした。この新知見は二つの事実を示唆している。則ち何等かの共通の要因が心窩部と背部兪穴に同時的に徴候を現していること,及び上部消化管からの迷走神経の痛覚求心性信号が背部兪穴からの求心性信号によって視床への投射が遮断されることである。すなわち心下痞鞕という腹部徴候が出現する背景には迷走神経・交感神経反射系の存在が示唆された。この知見は漢方と鍼灸のパラダイムの相違を乗り越えたものであり,今後の伝統医学の在り方に発想の転換を求めるものである。

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© 2016 一般社団法人 日本東洋医学会
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