2016 年 67 巻 1 号 p. 50-53
疼痛に対しては局所の瘀血に注目し,駆瘀血剤が用いられることが多い。今回,上腕骨外側上顆炎に起因する疼痛に対して,気うつに注目し,烏薬順気散加減が奏効した一例を経験したので報告する。症例は48歳女性,右肘を打撲後,疼痛が持続したため当院整形外科を受診し,上腕骨外側上顆炎と診断された。整形外科で10ヵ月間の保存療法が行われたが疼痛の改善が得られず,漢方治療を希望して当科を初診した。気分が憂鬱になる,身体が重たく感じる,月経が不順であるといった気うつに関連した症状が主で,鬱々とした話し方や表情が見られ,烏薬順気散加減の内服を開始した。1ヵ月後,首や肩の張りは消失し,痛みが軽減した。2ヵ月後,MRI で病変の改善を認めた。9ヵ月後,月経が規則的になり,11ヵ月後,痛みをほぼ感じることなく日常生活を送れるようになった。長引く疼痛で,気うつが強い症例に,烏薬順気散加減が有効である可能性が示唆された。