日本東洋医学雑誌
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臨床報告
繰り返される肺炎に滋陰至宝湯が奏効した1例
阿南 栄一朗織部 和宏
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キーワード: 高齢社会, 肺炎, 滋陰至宝湯
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2016 年 67 巻 2 号 p. 155-160

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抄録

症例は56歳女性。38°C台の発熱が続いたため当院を受診した。胸部X 線写真と胸部単純CT 写真にて両側肺野に散在する浸潤影を認めた。肺炎と診断し抗菌薬を投与,浸潤影は改善,解熱した。1ヵ月後,5ヵ月後に再度肺炎を発症。抗菌薬投与により軽快したが,過去4年間を確認すると年2~3回は肺炎を発症していたため,肺炎予防のため少量マクロライド療法及び去痰剤を開始した。しかし,4ヵ月後再び肺炎を発症。抗菌薬を投与して軽快した。肺炎を短期間で繰り返すため,滋陰至宝湯を投与した。すると,以後1年半に渡り肺炎の発症を認めなかった。 高齢社会となり,肺炎による死亡率も益々増加している。抗菌薬投与単独では,一旦肺炎は改善しても,再度肺炎を起こす患者を経験することも多い。いかに,肺炎発症を抑制していくかも重要となる。われわれは,肺炎発症の抑制に滋陰至宝湯の効果を認めた症例を経験し,同様の報告例は本邦で少なく,今後の症例蓄積が重要と考えられた。

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© 2016 一般社団法人 日本東洋医学会
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