日本東洋医学雑誌
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臨床報告
維持透析患者における肩関節症状に対して五積散が有効であった6症例
福原 慎也千福 貞博
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キーワード: 五積散, , 肩関節症状, 透析
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2016 年 67 巻 4 号 p. 364-370

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抄録

透析患者は透析治療歴と関係しない肩関節症状を自覚することがある。今回われわれは透析患者の肩関節症状に対して五積散が有効であった6症例を経験したので報告する。6例中3例では冷えを自覚して,残りは裏寒症状を呈していた。全症例で皮膚乾燥や筋萎縮などの血の異常を,また腎機能障害に伴う尿量減少や水分調節の影響などの水の異常を認めた。透析後には疲労感,口乾を認め気の異常も認められた。透析患者はこれらの病態が続けば,新陳代謝が衰え,熱産生が低下して「寒」の病態が生まれる可能性がある。また6例中4例で消化管障害を有し,1 例は鎮痛薬の服用により胃痛を生じており,食の異常を呈していた。五積散を処方したところ,全例において疼痛は軽減した。気・血・水・寒,そして食に関与する病態を透析患者に認めることがあり,繰り返す肩関節症状に五積散が有効である可能性が示唆された。

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© 2016 一般社団法人 日本東洋医学会
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