2016 年 67 巻 4 号 p. 408-412
腹部で触知する臍上悸は漢方医学における気の循環失調を意味する重要な情報である。本研究ではこの動悸の振幅が腹壁上では約4mm であることを明らかにした。筆者は永らくこの徴候が腹部大動脈の直径の著しい増加によるものと考えて来た。しかしこの推測は MRA で否定された。MRA での腹部大動脈の拍動幅は直径が最大で1.5mm 幅でしか変化しなかった。超音波エコー検査での腹部大動脈の拍動幅もまた約1.5mm であった。腹壁上で触知する拍動幅(4mm)と超音波検査での変動幅(1.5mm)の乖離を説明するためには腹部大動脈壁に発生する衝撃力を想定すると可能になる。発生する強力な衝撃力について,筆者は血流速度の増大,脊椎による反撥応力,そして心臓で発生する音圧が3つの要素であると考察した。