日本東洋医学雑誌
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臨床報告
西洋医学的アプローチでの止血困難例に対する黄連解毒湯の使用経験
坂田 雅浩薬師寺 和昭黒川 慎一郎七種 祐衣子沈 龍佑藤本 剛史駒井 幹佐野 智美亀尾 順子清川 千枝岩垣 博巳八木 実恵紙 英昭
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2017 年 68 巻 1 号 p. 47-55

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抄録

黄連解毒湯は精神神経症状を伴う高血圧や胃炎,皮膚炎などに対する実証向きの清熱剤として使用されるが,吐血や下血などの出血傾向がある場合にも応用されてきた。今回我々は,西洋医学的アプローチで止血困難であった出血性病態に対して黄連解毒湯が有効であった8例を経験した。代表例2例および注腸投与が有効と考えられた1 例について詳述した。代表例は80歳男性。再生不良性貧血を有し,僧帽弁置換術後で抗凝固薬内服中であった。出血性胃炎に対して内視鏡的止血術を繰り返したが止血が得られず,本剤を開始したところ,数日以内に出血症状は消失した。黄連解毒湯による止血のメカニズムは未だ詳細不明であるが,凝固系異常の有無に関わらず比較的速やかに効果を発揮したことから,細血管収縮作用などによる一次止血への関与も考えられた。黄連解毒湯は,消化管出血などの難治性出血例に対する薬物療法として,安全で有効な選択肢となる可能性がある。

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© 2017 一般社団法人 日本東洋医学会
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