2017 年 68 巻 2 号 p. 117-122
後期高齢者の心不全2症例に真武湯を投与した。症例1は84歳の男性。重症大動脈弁狭窄症と肝細胞癌を有した例で,心不全の充分な改善がえられず,増悪による入院を繰り返してきたが,真武湯投与後,胸水の減少,心胸郭比の縮小を認めることができた。症例2は84歳の男性で肺癌手術後,心不全と誤嚥性肺炎で入院し,心不全状態が回復しえなかった。投与後,尿量の増加とともに心不全の改善を認めた。2例とも真武湯による副作用は認めなかった。真武湯は甘草を含まないことが利水作用を発揮するポイントであり,他の補剤との安易な併用は控えるべきである。後期高齢者の心不全の終末期医療において重要な役割を担う薬剤と考えられた。