日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
臨床報告
大建中湯を漫然と服用することによって熱証をきたした一例
—大建中湯の適正使用と副作用に対する適切な対応について—
糸賀 知子千葉 浩輝高橋 浩子奈良 和彦田中 耕一郎
著者情報
キーワード: 腸閉塞, 大建中湯, 瘀血, 熱証
ジャーナル フリー

2017 年 68 巻 2 号 p. 123-126

詳細
抄録

54歳介護士 26歳,29歳時腹式帝王切開術,31歳時左卵巣嚢腫に対し,腹式左付属器切除術,41歳時,子宮筋腫に対し,腹式単純子宮全摘術の既往がある。腹式単純子宮全摘術後より,腸閉塞による入退院を繰り返しており,約10年間大建中湯を内服していた。X 年5月,大建中湯を内服しても便秘,腹痛が改善せず,首から上の熱感が出現したため来院。舌診では,舌は淡紅色,黄苔,裂紋を認め,舌下静脈は怒張していた。診察所見より,瘀血証,熱証と考え,桂枝茯苓丸2.5g/日を開始し,内服1週間後には症状の改善を認めた。昨今,大建中湯はイレウスに対して広く使用されているが,長期投与することによって,熱症をきたすということはほとんど知られていない。 漢方を処方する医師に対し,病名処方一辺倒になることに警告を鳴らし,一定の東洋医学的な知識の習得の重要性や副作用を未然に防ぐための注意喚起していく必要があると考えた。

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本東洋医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top