日本東洋医学雑誌
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論説
恵美三白の医術と医論
—医学思想の観点から—
舘野 正美
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2017 年 68 巻 2 号 p. 168-178

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抄録

恵美三白(1707-1781),吉益東洞と並ぶ,広島出身の古医方の一方の雄である。三白と言えば,即,峻剤の使い手,と思われがちであるが,それは決して真の姿ではないように思われる。上記の如き誤解は,偏に三白の医学思想についての研究の不足によるものであると思われる。そこで小稿は,この恵美三白の医術と医論を伝えるとされる『恵美君医事談』・『恵美寧固先生遺言』・『恵美先生医方略説』・『吐方私録』の4書の内容を分析し,その医術と医論を概観し,以てその医学思想の本質を解明してゆこうとするものである。
検討の結果,三白が,その〈親試実験〉の積み重ねに基づく的確な判断によって,時に穏当な処方を用い,また時に峻剤のみよる吐方や下方を処していたことが明らかとなった。三白はその正確な見立てによって,用いるべき時に“峻剤”を果断に用いていただけのことだったのである。三白は“見える”人だったのである。

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© 2017 一般社団法人 日本東洋医学会
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