日本東洋医学雑誌
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臨床報告
後期神経梅毒が原因と考えられた嚥下障害と誤嚥性肺炎の改善に半夏厚朴湯が有効であった1例
濱口 眞輔金子 達清水 いはね木村 廣三
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2020 年 71 巻 1 号 p. 36-40

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抄録

後期神経梅毒が原因と考えられた嚥下障害と誤嚥性肺炎を呈する患者の症状緩和に半夏厚朴湯が有効であった1例を経験した。症例は当科で痛みの加療を行っていた67歳の男性で,嚥下困難を主訴として加療を希望した。神経学的所見や血液,髄液検査の結果,神経内科医によって後期神経梅毒に起因する球麻痺による嚥下障害と両肺下葉の誤嚥性肺炎と診断された。漢方医学的所見に基づいて本症例を気滞および痰飲と判断して半夏厚朴湯7.5g/日を処方した結果,内服から1週間後には嚥下困難が軽快し,3週間後に訴えはほぼ消失した。また,誤嚥性肺炎の改善もみられた。後期神経梅毒は感染後20~30年で発症し,その基底核障害によって嚥下反射や咳反射が低下するが,理気化痰作用を有する半夏厚朴湯は咽喉頭や気管粘膜に放出されるサブスタンスPの濃度を増加して,後期神経梅毒が原因と考えられる嚥下異常の緩和に有益な方剤であると結論した。

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© 2020 一般社団法人 日本東洋医学会
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