日本東洋医学雑誌
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慢性関節リウマチの漢方と鍼灸による治療の検討 (第1報)
長瀬 千秋野々井 康治
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1983 年 34 巻 1 号 p. 27-36

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抄録

1982年5月1日より同年10月31日までに, 47名の慢性関節リウマチの患者を漢方と鍼灸により治療した。治療の有効度の判定は, 臨床症状の改善の程度, およびCRP, RA-テスト, 赤血球沈降速度などの血液検査の改善の程度により行なった。煎剤による漢方治療の有効率は57%に達したが, 各製薬会社のエキス剤によるその有効率は27%にとどまった。漢方治療においてもっとも頻繁に使われた処方は, 桂枝, 芍薬, 甘草, 大棗, 生姜, 蒼朮, 茯苓附子から成る薬方で, 日本名で桂枝加苓市附湯 (中国名, 仮称桂枝湯加茯苓蒼朮附子) と呼ばれる処方であった。この処方の有効率は55%であった。
東洋医学的治療により改善を見た患老群のうち, 50%の患者が鍼灸治療を受けていたのに対し, 改善を示さなかった患者群では, その32%にあたる患者しか鍼灸治療を受けていなかった。この結果から, 慢性関節リウマチの治療にあたっては, 漢方治療に鍼灸治療を併用することがより有用であろうと考えられた。
著者らの治療から脱落した患者は21名に達したが, これらの患者には比較的重症者が多かった。
慢性関節リウマチの患者の最善の治療方法は, 煎剤による漢方治療と, 鍼灸治療と, そして重症の患者に対しては, 西洋医学的な鎮痛剤などによる治療とを併用することであろうと考えられた。

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