酸棗仁湯は不眠に対する薬方として, 古来有名であるが, それについての実際の報告例は誠に少ないものである。たまたま, 不眠に対して同湯がよく効を奏した2症例を経験したので, これにつき報告し, 文献的にも若干, 検討した。漢方関係の日本における代表的な諸雑誌においても, 報告例は極めて少なく, また時にあっても, 身体的所見その他の記載が十分なものは, あまり見当らなかった。
酸棗仁は十分炒って用いないと, かえって眠りを妨げるとの説もあるようであるが, 本報告例から考察するに, そういうことはないように思われた。