1983 年 34 巻 4 号 p. 225-230
「医心方」は現存する日本最古の医学書であり, 丹波康頼が984年に選述したとされている。その内容は, 随唐時代の中国医書から抽き出したものが大部分で, 大体10世紀の経絡, 経穴の主治症を知ることができる。この時代は, 経験的要素が多く五行論の影響は少ないと言える。
馬王堆第三号漢墓より発掘された十一脈灸経は経絡を主として考えているが, これに対し1,000年を経た唐時代には経絡, 経穴は大方整備され, 経絡の流れと, 経穴に相当する脊髄断区部位が混在して治療に用いられている。
「医心方」に出てくる主治症に対する経穴の作用を現代医学的に分析して考察した。