日本東洋医学雑誌
Online ISSN : 1882-756X
Print ISSN : 0287-4857
ISSN-L : 0287-4857
顔面の熱感を訴える高血圧症の一治験例
木下 恒雄
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 35 巻 1 号 p. 59-63

詳細
抄録

症例は昭和52年12月13日当院初診の顔面の熱 (ほてり) 感を主訴とする43才の男性である。52年12月16日よりTocopherol nicotinateを用い, 血圧のコントロールはほぼ良好であったが, 初診以前からある顔面の熱感が持続するので, 53年11月6日より黄連解毒湯を併用したところ, 12月下旬よりこの症状は次第に軽減し, 54年1月には消失した。初診前にみられた狭心症様発作は現在まで出現せず, しばしばみられた最低血圧の上昇も殆んどみられず, 良好なコントロールが得られた。56年11月28日からは証の変化により黄連解毒湯を中止し, 釣藤散に転方したが, その後も順調な経過を辿っている。
本治験を通じ, 熱にも種々のパターンがあり鑑別が重要であること, 西洋薬との併用が有意義な場合があること, 慢性疾患であっても経過中の証の変化に注意すべきこと, 個の医学の重要性等の教訓を得た。

著者関連情報
© 社団法人 日本東洋医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top