日本東洋医学雑誌
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甲状腺機能亢進症の心不全に柴胡加竜骨牡蠣湯が有効であった8症例
雪村 八一郎
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1985 年 36 巻 3 号 p. 197-204

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抄録

甲状腺機能亢進症の経過中生ずる心不全は治療に対し抵抗性を示すとされている。今回, 心不全の生じた本症患者8例に柴胡加竜骨牡湯エキス剤を投与することで, この心不全からの回復が得られたので報告する。
症例は男2女6の8例で, 年令は30―71才。全例, 血中甲状腺ホルモン測定, あるいはTRH試験で診断を確認している。5例は抗甲状腺剤, 遮断剤による治療中, 3例は未治療時に, 下肢浮腫から肺水腫までの心不全を生じた。5例には抗甲状腺剤とβ遮断剤を, 2例には抗甲状剤を投与しながら, また1例には両剤とも投与せず, 柴胡加竜骨牡蛎湯エキス剤を投与したところ, 3週から3日の経過で心不全の消失が得られた。
また, このことから柴胡加竜骨牡蛎湯の指示である煩驚, 〓語とは交感神経刺激により精神神経過敏が生じた状態, 胸満, 小便不利, 一尽重不可転側とは高拍出性心不全が生じた状態ではないかと推察された。

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